長い階段を不確かに登ってゆく 何もない世界は夢 4

鉄色に街は吠え立てる。
僕は深い谷へ 僕は街の隅へ。
身体も、過去も、未来も、曇った小瓶のなか。


昨日、休みだと言うことで夜明けまで16日向けの作業してて、どろどろになった脳内でどこかで聴いた曲がながれた。

どうしても思い出せなくて、仕方なくgoogleでキーワードを検索してみたら、昔聴いてたパンクバンドのバラードだった。LAUGHIN’NOSE の BRIGHT’N’ SHADOWって曲。疲れた身体にしみる。

amazonプライム会員は無料みたいなので是非聞いてみて欲しい。とても好きな曲。


このamazon music。再生されたらamazonから作曲者の元に僅かばかりではあるが、お金が振り込まれるそうで、素晴らしい仕組みだと思います。

ともかく
twitterでも告知させて頂いたが、来る11月16日に書泉ブックタワーさんの9階?でサイン&トークイベントが開催されます。
ヒマでどうしょうもないという方は来てくれればきっと功徳を積めますよ。あと10名ぐらいで締め切りっぽいです。
■告知ページ

自分でも、なんでこんなことになったのか良くわからないけど、本もよく売れているらしい。
流されるままに生きてるけど、まさか本を出して、まさかサイン会までやることに。まさに『長い階段を不確かに登ってゆく』であると。

とはいえ、生活はなにも変わらない。
相変わらずカップ麺ばかり食ってるし、仕事はしてるし、身をくるむ毛布は少し臭う。

たぶんこのままダラダラと人生の一切は過ぎゆき、気がつけば死んでいるのだろうな。そう思う。
だから機械の身体になりたい。悠久の歴史とともに永遠の生を。

皆は浅はかだから、『機械の身体』と聞いて、ロボ松閣みたいのを想起したことだろうと思う。

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もうね、想像力の欠如としか言いようがないよね。
俺ぐらいになると最低でも多脚戦車型が良いと思う。

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頭部が二つあるのがソレっぽい。ちなみに圧縮ビームは下部だけでなく口からも出ます。
これで俺は全てを消し去るわけですよ。

この地上にはびこる悪も正義も、理想や理念、夢や希望、愛も憎しみも、来るべき新世界も、忘れ去られた旧世界も、美も醜も、素晴らしいモノも下らないモノも、分け隔てなく、ただその全てを無に帰するわけですよ。そしてすべてを消し去り、自らも消えるわけっすよ。
初めであり、終わりでもあるワケっすよ。アルファでありオメガであるワケっすよ。

最後の審判であり、ヨハネの黙示録における『神の民と戦うために海の中からでてくる獣』なワケ。

人類は愚かにも、オメガでありアルファである松閣に逆らい(註:この頃には『松閣』というのは忌名になっているので、おもに『アレ』と呼ばれる。子供たちはその由来を知りたがるが、誰も教えてはくれない)一致団結して俺を倒そうとする。

でかい大陸はあらかた俺が滅ぼしてしまうので、人類はオーストラリアを拠点――『約束の地』としてその総力を結集する。
各国の首脳が集まった第五次メルボルン会議の場で、ある皮肉屋は
「人類が『手を取り合う』には、敵が必要ってことさ。それも、とびっきり桁外れの脅威がな」と同僚に向かって唇をゆがめた。

しかし、それでも『手を取り合う』状況とは言えない現実があった。各国軍部を中心とする主戦派と、話し合いにて解決しようとする穏健派の争いが起こっていたからだ。
主戦派は俺のいる場所を衛星で特定して核を打ち込めと声高に主張するが、それは環境保護活動家たちの強い反発もあり、断行できず――踏み切れないでいた。
それに、俺に対して核攻撃が有効である確証はどこにもない。ただいたずらに俺を刺激するだけではないか、そんな意見もあった。

ある学者は俺に二つの頭があることに着目し、右と左、それぞれが『右脳と左脳』の働きを持っているのではないかと推測した。論理的思考――ロボットに必要不可欠な要素を司る――左脳を破壊できれば、ヤツは混乱し、破壊活動をやめるのではないか。そんな根拠に乏しい仮説だった。もちろんこの場合のヤツとは俺のことを指す。

手ぬるいとの批判もあったが、これは妥協案として採用され、『オペレーション:オルトロス (オルトロス作戦)』と名付けられた。
これはギリシャ神話における双頭のイヌ『オルトロス』から取られた名だったが、『オルタ=ロス』というダブルミーニングもあり、対立派閥を超えておおむね好評だった。

「この『OPオルトロス』が失敗に終われば、全面核攻撃になる。そうなれば仮に人類が生き残ったとしても、この地上が我々人類の生存に適さない場所になるかもしれない。君たちには重荷を背負わせることになるが、キリストも重い十字架を背負ったと聞く。骨は拾う――だから心してゴルゴダの丘へ」

首脳連合の書記長による、出発部隊への訓示は手短ではあるが隊員たちに否応なしの『死』を意識させるモノだった。
OPオルトロスに従事する者は、その全てが志願によるもので、士気は高い。
愛する恋人を残して大陸行きの軍船に乗り込んだ者もいたし、孤独な人生ながらも『死ぬなら俺のような者のほうがいい』と割り切ったことを言う者もいた。

「ねぇ小隊長。頭部への攻撃がまったく効かなかった場合、退却はどこへ?」

「バカ。退却する先なんてあるか。やる、んだよ。それしかない。剣が折れ、矢が尽きても、まだ拳はある。数秒、コンマゼロ秒、もっと少なくてもいい。ほんの一瞬でも人類の滅亡を遅らせるんだ」

スーサイド・スクワッド――決死隊の多くが生きて帰れないことを意識していた。俺と対峙して生き残った人類はまだいないのだ。

「全てを無に。ヤツのそれは攻撃ですらない。殺人でも殺戮でもなく、ただの消去だ。ドラマを期待するな。そんな甘っちょろいモンじゃない」

決死隊はまだ知らない。自分たちが『希望』を持ち、それにすがっているということを。希望が存在するがゆえ、それは絶望へと化学変化を起こす。いっそ、何もない無であればよかった。
彼らはまだ知らない。松閣――双頭のオメガ――俺に自己複製機能が備わっていると言うことを。

彼らは俺が根城とするスイス南部へ辿り着いたとき、それを、絶望を知るだろう。

雪と緑のコントラストが美しい山々の裾野、そこに幾何学的に規則正しく並ぶ俺を見て、何を連想するだろう?
皮肉屋の唇は、もう傾かない。


――――次回予告――
彼らが不確かに登っていた階段は、死刑台への13階段。
場を満たす赤。それは降り注ぐ赤光レーザーの美しい雨か、あるいは血しぶきか。

死ぬか、殺されるか。選択肢の少ない絶望のなか、ある小隊が故障した松閣を見つける。
ある通信兵が熱病にうなされたかのように呟いた
「こいつを――ハッキングすれば。いや、プログラミングをいじれば――もしかすると、俺たちの――」

次回 『絶対無敵オルタロス ~地球の長い夜~』は
「立ち上がれ、出来損ないのオルトロス!」お楽しみに!







4 thoughts on “長い階段を不確かに登ってゆく 何もない世界は夢

  1. Reply みき 11月 12,2018 9:05 AM

    絶対無敵オルタロスさまさま。お久しぶりでございます。
    月曜日からオルタイム更新、嬉しいです!今週一週間頑張れそうです!
    ああ、東海の私は秋葉原までいけません…とても悲しいです…
    でもでも、本当におめでとうございます!!!
    『松閣オルタ先生』とHPに載っているのをみると、ニヤニヤしてしまいます!せんせい!素敵な響き!本当におめでとうございます!!!
    オカルトクロニクルは、夜読むには怖い内容や画像もあるので細目でがんばって見たりしていますが、相変わらず松閣ワールドに引き込まれる文章に夢中になってしまいますね。
    いつか、いつかでいいので、13月も偽名仮名も、出版されることを夢に見ております!東海でのイベントも夢に見ております!
    せんせい!これからも応援しております!

    • Reply まつかく 11月 18,2018 7:48 AM

      >>みきさん
      返事が遅れました。すみません。
      ようやくイベントもおわって書籍関係が一段落付いたので、ようやくまともに更新できそうです。
      でも先生はやめてくださいねw 違和感しかないのでw
      運営スタッフのかたにも「おれは先生と呼ばれるガラではないので、先生はやめてくださいよ」と言ったけど、「何言ってるんですか、本出したら先生なの!」と言われました。

  2. Reply 酸せい 11月 12,2018 9:11 PM

    1日遅れのお誕生日おめでとうございます(﹡ˆ﹀ˆ﹡)
    そして初書籍・初サイン会&トークショーもおめでとうございます
    松閣さんにとって転機となる年だったのかも知れませんね。良い1年を送られることを祈っております。

    • Reply まつかく 11月 18,2018 7:50 AM

      >>酸せいさん
      ありがとうですー。もうこの歳になると、ほとんど忌み日みたいになりますけどねw

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