今、灯火が此処で静かに消えるから

君が確かめて。


もともと、月に一度は頭痛が酷くなるタチなのだが、最近は特に酷い。

頭痛が酷くなると全ての作業効率が落ちるので、最近は痛くないときでも抑止力として頭痛薬を飲む。薬漬けである。
頭痛が酷いとき

「ああ、俺はもう死ぬのだな。なんともあっけない人生だった。息絶える前にPCのエロ動画と未発表稿を処分しておかないと……」

などと考える。実際は息絶えたことないので、考えすぎではあるのだろうが、油断したところを狙うのが兵法の常道だと聞くので油断は禁物でござるワケでござるよ。

しかし、自分の死期を悟れるというのは良いことかも知れない。

たとえば自らの死を冷静に見つめていれば、より安らかな死が迎えられると思う。えげつないエロ動画も処分できるしね。いやほんとえげつない。なんで保存したんだ?ってレベルの奴。オウフ、そこそういうことする穴じゃねぇから!

生々しい話題を嫌気して女性読者がブラウザを閉じたところで、続けたい。

たとえば、俺が今死んだら、俺の財産ってどうなるのだろうか。そんな沢山あるワケじゃないが、ささやかな金融資産と資料、PlayStation®VRはどうなるのだろう?
いや、PlayStation®VRは持ってない。見栄を張った。

よくある話なんだけど、あるマニア界隈で、唐突に中古本市場にレアな絶版本がドカッと売りに出されたりする。しかも廉価で。
これは概ね、どこぞのマニアが亡くなって、その市場価値をしらない遺族が二束三文で遺品を売却したのだと判断される。

ここで多くの『その道を愛する同好の士』つまり他のマニアは「ラッキー! お宝発見!」とはならずに、やるせない、さみしい気分になるのだそうだ。
どこの誰とも知れないが、同好の士が亡くなったのだな。仲間が一人逝ってしまったな、と。

虎は死して皮を残し、人は死して名を残す、とよく言うが、実際は名だけでなく、その人の持ち物が残る。
そしてその遺品がその人の人生を現すような気がする。
しかし、俺が死んでも、えげつないエロ動画しか残らん。PlayStation®VRは持ってないしな。

おれが孤独死したとする。すると通報を受けて警察がやってくる。
敵の多い俺のことだから、警察は他殺の線があるとにらんでいる。俺のことを『やっこさん』と呼ぶ。

そうして、PCとかから何らかの――犯人につながる物証を探そうとする。

「うわっ! 警部! これ! この動画見てください! えげつない! そこ、そういうことする穴じゃねぇから!」

「うわっ! ほんとにえげつない! こいつぁトンデモない山を踏んだかもしれん……。こ、怖くなってきたよ、ねぇ……て、手を繋いでいい?」

かくして刑事、警官、検死、第一発見者などが、みんな手を繋いで――ってなんか吉田戦車のマンガであったな。

それはともかく、俺はロクなもんを遺してないから、俺の実像とはかけ離れたプロファイリングをされたりするのだろうな。
薬漬けのオカルトマニア――となるとなんだか根暗で社会から孤立した人間像が浮き彫りになるのかも知らん。部屋も散らかってるし。

とりあえず、部屋を片付けて、PCにはパスロックをかけて、3回以上間違うとHDをフォーマットする設定をかけておく。

しかし、こうなってくると、死ぬタイミングが難しい。部屋なんて3日で散らかるし……。冷蔵庫の冷凍食品はどうすればいいんだ? 洗濯物も。
自殺志願者が「身辺整理」で挫折する気持ちが少し分かった。ううむ。

こう考えてゆくと、「ちゃんと死ぬ」って「怠惰に生きる」よりエネルギーがいるのかもしらん。
老人相手に「終活」とかいって、死ぬ準備を勧めるビジネスに嫌悪感を抱いていたが、これは生まれるべくして生まれた商売なのかも。楽な方へ人は流れる。

「終活」だの「婚活」だの、なんらかの経済活動を焚きつける言葉が世の中あふれてるが、「生きる活動」――「生活」って、物事の根底にありすぎて、当たり前すぎて、話題にもならない。

「よりよい生活」がきちんとできていれば、「終活」も「婚活」もホントは必要ないのだろうなぁと。

渇いた時代である。

時代に反して君らの股間は濡れっぱなしであろうが、その話はまた別の機会に。

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