幽霊 VS 松閣

幽霊なんかいねぇよ! と、タフでクレバーな懐疑派を気取って深夜に心霊番組みたら、こわくて眠れなくなったでござるよニンニンの巻。



はばかりながら松閣です。

エッセイということで、雑談的に書きます。

いやぁ、いるのかも知れませんね、霊。

スカパーでやってた番組なんですけど、『元アメリカ特殊部隊隊員が新居として借りた家に、幽霊がどんどん出ちゃうわよ』という実録系ドキュメンタリーでした。

やっぱ予想に反さず、すげーマッチョでした、軍人。筋肉ダルマ。
もう霊とかどうでも良くなるぐらいにマッチョなのです。

さすがだなぁ、と思ったのが元軍人だけあって、幽霊が出るたびに凄い剣幕で幽霊に怒鳴るワケですよ。

「消えるな! 出てこい!」

だの

「俺が相手になってやる!」

「この家から出て行け!」

さすが男の中の男……鬼軍曹。やはり特殊部隊は違う。

なんだか、彼が怒鳴るたびに幽霊被害が彼から彼の家族へとシフトしていったように思えたのですが……気のせいですかね。

その借家に出現するのは……

だらしなく座り込んでタバコを吸ってる幽霊とか。
屋根を駆け回る幽霊とか。
強く髪を引っ張る幽霊とか

なんともアクティブというかアグレッシブな霊たちでして、なんだか騒がしくてワロタ。

やはり元軍人ともなると、襲い来る幽霊もアクション映画っぽいのでしょうね。

まぁ、軍人さん最終的にはその借家から引っ越しちゃんすけどね。名誉なき撤退というワケで。

「体力がどれほどあろうと、幽霊には勝てませんでした」と悔しそうに語る元軍人が渋ス。

こういう番組を見るたびに俺などは『霊能力者は何をやっとるのか、追い払え! 戦え!』と憤りを覚えてしまう。

税金も払ってないような生産性のない奴らに、どうして元軍人のような善良な納税者が追い払われねばならんのか。

「心霊現象が理由とあっては、引っ越しても敷金が返ってきません。我が家の家計は苦しいのです」と語る元軍人の訴えはリアルすぎて涙を誘う。

番組でも霊能力者に頼っていたが、彼女らは「やばい」だの「逃げて」だの根本的な解決策を取ろうとしない。これは由々しき問題であるぞ。

危険の忠告だけなら俺にだってできるんすから。

水晶玉をかざして、数珠かロザリオでも拳に握って、「地獄に堕ちな! 破ーッ!」が霊能力者の仕事でしょうが。ぬーべーでもやってたぞ。職務怠慢もはなはだしい。

結局はこの幽霊物件がどうなったのか、番組では触れてませんでしたが、性格の悪い松閣としてはその後が気になるところ。

その後の入居者たちも「マジ出るっすわ」となれば一連の出来事も信憑性を持つんですが、どうも世の中ってのはそういう風にできてはいないらしい。

かの映画化されて有名な幽霊屋敷『アミティビル・ホラーハウス』ですら、その後の入居者は「なんもないっす。でないっす」と平和に暮らしてるらしい。
なんだかなぁ。

映画でもドキュメンタリーでも、たいていキリスト教関係者が「父と子と精霊の御名において……」と家中に聖水を撒きながらお払いしてるんだが、あれって幽霊がキリスト教信者じゃなかった場合にも効果があるのだろうか。

生前、仏教徒だった幽霊なら『キリストとかしゃらくせぇ! 最高にクールなのは仏陀だぜ! やっちまえ、邪教徒をやっちまえ!』とかならんのだろうか。

宗教対立が理由で、幽霊の悪行にも拍車がかかったりせんのだろうか。

『幽霊になるのはキリスト教信者だけ』という仮説が頭に浮かぶが、実際、聖職者たちが行うお払いで完全に除霊されたという話を俺は寡聞にして知らぬゆえ、お払い自体が見当違いなのかも。

じつは、俺の職場にも幽霊がでるとまことしやかに噂される場所がありまして、俺も体験しました。
夜勤で1人黙々と作業してたら、なんだか子守歌がきこえるわけですよ。

一般的な体育館の半分ぐらいの広さを有する部屋なんですが、機械以外には俺しかいない。

俺は有線か何かの放送だと思って、上司に苦情を言った。仕事にならねぇよ。と。

しかし上司の森口さんは「そもそも有線の電源入ってねぇよ、ザコ」とニベもなく言う。
俺も調べたが、たしかに電源は入っていない。

でも子守歌は聞こえる。女性の声で、延々とオンリーワンリピート。

俺は怒ったね。意図がわからん!

こっちは仕事してんのに、邪魔すんじゃねーよ、と。

子守歌なんて眠くなるじゃないか!

だいたい俺は子守されるような、子供じゃない!

そもそも、俺に子守歌を聴かせてどうする。

俺、眠くなる。

仕事ができない。

俺、首になる。

頭脳明晰、眉目秀麗であるエース松閣を失った会社の経営は傾く。

会社が倒産する。

建物は壊され、更地に戻される。

幽霊も居場所がなくなる。

幽霊泣く、俺も泣く、上司も同僚も社長も泣く。
失業率が上がって役人も泣く。
税収が下がって議員も泣く。
日経平均が下がって投資家も泣く。

こんな取るに足らない、幽霊の思いつきでしかない一つの子守歌から、これほど多くの涙が!

幽霊は自分で自分の首を絞めているのだ。

つまり、奴らはアホなのだ。

アホだから自分が死んだことに気がついていないのだ。
なんだか、その一件があってから職場の情報を収集分析したら、あの区画にはたくさんの幽霊がいるらしいことが判明した。

赤いハイヒールを片方だけはいた女。

鎧武者。

髪の長い子供。

小さいおっさん。

目撃された幽霊は以上の4タイプだ。先ほどの結論に照らし合わせれば、上記4名は全てアホである。

子守歌を歌ったのは赤いハイヒールのアホだろう。
片方だけしか靴を履いていないという事実からも、彼女がアホであるという仮説に裏付けがつく。

だいたい、囁き声とか子守歌とかまどろっこしい。言いたいことがあるならはっきり言えと。

鎧武者も現世で粘りすぎ。500円やるからマクドでも食ってさっさと成仏しろと。こっちは忙しいのだ。

こういう風に考えてゆくと、なんだか全然怖くなくなる。

幽霊の声とか、姿を見ても、「あー、またアホがでよったで」と軽くスルーすることができよう。

幽霊を見たときの反応も、これからは

「見て! あれ幽霊!」

という恐怖の色をにじませた反応ではなく。

「見てみ、見てみ。アホがおるで」が正しい。

奴らはアホがゆえに、『建物の所有者は誰か』という概念、『現世は誰のモノなのか』という概念、『税金を払っているのは誰なのか』という概念を理解できないのだ。当然、自分の生死判別という基本的な事すら理解できない。

思慮、分別に欠けるアホなのだ。

幽霊アホ仮説。

これは素晴らしい発見かも知れぬ。学会もこのエキセントリックな仮説に色めき立つことであろう。

ネイチャーやサイエンティックの編集者の方。論文が必要なら用意しますのでご連絡ください。

まぁ……幽霊よりも、霊能力者のほうがアホかも知れんがw

今回の講義はここまで。

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