すべての鐘を鳴らし、開花を皆に告げなさい。 2

歓喜の祈りで空を照らし、祝いをあげよ。闇はすでに去ったのだから。


松閣です。
きょうのタイトルは、松閣たまに聴きたくなる曲100選に選ばれた4heroの『Les Fleur』でした。

この曲好きなんですけども、3分31秒からのパートなんて歌ってるんです?

♪セイ マァー、ニャーニャーニャー、モーナァーマァァァーン(イィィーイ イィーイィー)」?

???
なんなんですか、これは。どうせ誰も真面目に聞いてないとか思って、馬鹿にしてるんですか?

猫みたいな歌詞はともかく、今年も暮れようとしている。

俺は別にノストラダムスの予言を信じていたワケではないんだけれど、なんとなく1999年7の月に世界が終わる気がしていた。
だが何も起きなかった。

でもまぁ、そのうち終わるでしょう。少し延びただけさ、そんなものさ

と、楽観的に考え、1999年以後はロスタイムという感覚で生きてきた。

なのにどうだ。
もう2018年になるのだと言う。
ロスタイムにしてはちょっと長すぎるんじゃないか。

ちっとも世界は終わる気配を見せない。
こんなことになるのなら、俺はちゃんと生きれば良かった、やり直させろ、と誰かに苦情のひとつでも言いたくなる。

若いうちにお見合いでもなんでもして、なんとか結婚して、子供を作っておくべきだったかも知れないとふと思う――もう、たぶん手遅れ。
こんなことを言うのも、いま俺の実家は『お家断絶』の危機にあるらしいと聞いたからだ。

細かい説明は省くけれど、どうも俺の代で後継者が生まれないまま――松閣家は終わると目されている。
いや別に俺がモテない、ってのだけが原因じゃないんすけどね。兄たちも子供いないし。たぶん家系的に繁殖力の弱い、淘汰待ったナシの遺伝子なのであろう。

いわゆる
末代まで祟ってやる!」の末代、そして末子が俺というワケなのである。ラストマン・スタンディングなワケである。

これ、結構面白い問題で、このままいくと
松閣家の財産・財物は最終的に国庫に納められる事になるんだろうなぁと。

年齢順からいえば、家族内では俺が最後まで生きてるのが妥当。つまり、衰退末期には、すべての財力が相続によって俺に集中する算段なワケですよ。

しかし、その頃には俺も死兆星がチラチラ頭上に輝いているであろうから、孤独死する前にその金の使い道を考えておかなければならない。国に没収されてなるものか。

まず、相続先としてすぐに思いつく――『養子』は現実的では無いらしい。

俺のような独身男性には、養子は取れない。世の中には性的悪戯目的で子供を引き取る変態などがいるからして、基本的に独身、特に男性は養子を簡単には斡旋してもらえないらしい。

そこに『オカルト好き』、『インドア派』などの説明が加わると、養子どころか、まともな人間は誰も間合いに入ってこず、宗教やアムウェイの勧誘員ですら忌避する存在となる。――つまり俺だ。

最近では独身男性は生きているだけで犯罪であるという法解釈もあるらしく、世間の目は我々に対して酷くきびしい。
死刑にならないだけマシではあるが、こんな世の中に生きている――というだけで終身刑と同じだと俺は声を大にして言いたい。けれど悲しいかな、その声だって誰の耳にも届かない。

ともかく、養子がダメなら……

次に思いつくのは孤児院設立への出資、である。

『聖 松閣伯オルティアーノ財団 記念孤児院』名前はこれな。途中で変えたりしたらぜったいに許さない。

記念孤児院で、未来へ種を埋めよう。種のいくつかは、やがて美しい花を咲かせて誰かの心を癒し、またいくつかは美味しい果実を実らせ誰かの命を救うかも知れない。
院長は、優しそうな壮年のシスターにやってもらう事にしよう。

……なのだけれど、その頃には少子化が進行しきって子供自体がいない――あるいは少なすぎて孤児院が強制的に閉鎖される可能性がある。
あるいはシスターが私腹を肥やし、資金をショートさせるかも知れない。引き取った子供たちを虐待死させていた実際の事件もある……。

そうなったら、また国がソロバン片手にやってきて、国有化の名の下に、ないし認可の取消状を印籠にして、資金をがっぽり回収してしまうワケっすよ。そんなの許せない。


じゃあ、こういうのはどうだろう。

財産の全てを現金化し、それを主要通貨のいくつかに変える。ドル、円、ユーロ、元あたりか。

分散して各国の主要指数に投資。アメリカならS&P、ユーロはFTSE、とにかく手堅いインデックスに投資する。
そして、得られた配当金は常にDRIPで自動的に同指数なりETFなりに再投資されるよう設定しておく。

そうして、150年以上はそのシステムで運用し、一切の変更、出金は禁止する。管理は信用できる弁護士数人による委員会方式を採用し、独断も禁止。委員が1人亡くなったら、残った委員による推薦で新人を加入させる。

S&P(日本での日経平均に相当)の過去実績は、悪くとも長期で年利8%前後というから、仮に、暴落・低迷などを考慮し、低めに見積もって、財団資金を平均年利6%で運用できたとする。

俺が死んだときに、まぁ相続財産と保険で財団の元本となる遺産が4000万円ほどあるとして……

150年にわたって封印される財団資金は、上記の条件で手堅くコツコツと増え続る。

やがてパンドラの箱が開かれるとき、つまり松閣死後150年めで……

遺産は日本円にして2358億4893万円ほどに膨らんでいる計算になる。

これは、学資に困る貧困家庭の優秀な小学生〜高校生〜大学受験生本人に厳正なる審査を経たうえで無利子にて融資される。

返還期限はなし。踏み倒されたって良い。次に繋ぐという意思があり、それなりの収入を得られるようになった者だけが善意で返還すればよし。

ちなみに年間の融資総額の上限は141億円とする。これは財団が1年で得られる配当収入6%に相当する。つまり元本を減らさず、延々と毎年141億を学資として貧困家庭に供給するわけだ。

これならば、心細い資金で孤児院をやるよりもより多くの種を蒔けるだろう。
141億から数%を拠出し、幼児〜中学生までの子供を引き取る寄宿舎を運営しても良いかも。

かくしてオルティアーノ財団により、教育格差は軽減されるし、俺は多くの子供を育てることに貢献できる。一面では我が子たちとも呼べるだろう。
遺伝子死すとも思想は死せず。

こう考えると、『お家断然』だの、『墓の管理は誰が行う』だのという、最近実家を騒がせている問題がいかに近視眼的であり、小さく、瑣末な悩みであることか。

しかし、問題は『信頼できる弁護士』である。

これは、『清純派のAV女優』

あるいは『賢明な投資家』

もしくは『クリーンな政治家』

もしかしたら『独身貴族』

などと同義語に属し、実在するとはまことしやかに語られているが、その存在が確認されたことはない――いわゆる都市伝説の一形態と見なされている。

まず、信頼できる弁護士という未確認生物を探す旅にでなくては。
ロスタイムの終わる――その時までに執行人が見つけられると良いのだけれど。

2 thoughts on “すべての鐘を鳴らし、開花を皆に告げなさい。

  1. Reply Norm 12月 27,2017 12:16 PM

    財団とは壮大な計画ですねぇ…
    遺伝子死すとも思想は死せず。って言葉かっこいいです
    私も気付けば末代になってしまいましたな…(´ω`)

    • Reply まつかく 12月 27,2017 5:34 PM

      >>Normさん
      いわゆる『未来への遺産』というやつですね。150年後に日本円がまだ価値があれば――ですけども。

      もしかしたら
      ため込まれた財団の遺産が↓こんな風になってしまう未来も。


      すくなくとも、上のモヒカンみたいな子孫が生まれる可能性を考えたら、我々のように末代――系譜にピリオドを打つのも悪くない選択なのかも知れません。

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