モダンボーイとモダンガールを叩いてみれば文明落花の音がする。
松閣にはべり。
諸ゝ更新が滯っておるとて、さる事は瑣末なる問題なるに候。
「十三月の解放區、毎週更新す」ナドと云いしも、君、更新セズ、我、憤死!
―などと君らは謂うのにはべらむが、未だ今週はあと1日と1時間殘ってはべるに候。淺はかなり、君、候。
いや今週忙しかったんで候よ。
「なれば、かような駄文クドヾ書いてないで、さっさと更新せしむれよ、君」
せしむれよ? 正しいんですか、その使い方は。
いやね、さっき東京から帰ってきて、凄く疲れたんです。だから今日はサボります。宣言してサボるの初めてすね。凄い開放感あり候。
とはいえ明日も休みなので、明日書きますので期待せしむれよ、君。
んで、電車に乗ってる時に気がついたんすけど、ルーズソックスって絶滅したんすね。
制服JKが沢山いたけど、少なくとも俺の見た中には1人も居なかった。
もはやショップとかにも売ってないのかもですね。
こうやって歴史は移り変わってゆくのですね。俺と君だけを取り残して。
ルーズソックスを一足一足手作りしてた匠たち――職人たちはどうなったのだろう。
考えてもみて欲しい。
それこそ十数年前のこと。
江戸時代ぐらいから脈々と靴下を作っていたルーズソックス職人。その頃は主に宮仕え相手の商売でもちろんルーズじゃない靴下だった。やがて幕府は倒れ、文明開化がやってきて、数年の戦争を経験して、バブルの盛衰に感情を上下させた。
古くから続く靴下職人としての技と誇りを現代まで繋いできた。
だが平成の世になって、白靴下じゃあ食えない。ダサいからだ。
職人息子などは学校でいじめられたかも知れない。
悪ガキ1「やーい、お前の父ちゃん、白靴下職人! パッツパツの白靴下」
職人息子「そんな事ない!」
悪ガキ2「そんな事あるんだよ! ウチの母ちゃんが言ってたぞ、お前の家じゃ毎日毎日、コソコソと白靴下ばっかり作ってるって! お前だって、いま白靴下履いてるじゃないか、コソコソとよ!」
職人息子「コソコソなんてしてない!」
悪ガキ1「こいつ、白靴下職人の息子で、いまも白靴下履いてるくせに、生意気だ! やっちまえ!」
かくして擦り傷とタンコブを沢山作って、息子は帰宅する。
彼は父親をかばった。だが腹立たしくもあった。
なぜ、自分の父親は、他の父親のようにサラリーマンじゃないのか。なぜ白靴下職人という特異な職業についているのか。
――ナンバーワンでなくてもいい、オンリーワンであれば。
そんな事を歌っていたグループがあった。いい歌だ――励まされる――人々は口々にそんな風に評価した。
だが少年にはわからなかった。
オンリーワンは迫害されるじゃないか。突出した個性は、異端視され、異常視され、隔離されるじゃないか。自分や、白靴下職人がそうであるように。
少年は家族の集まった夕食の席で、コロッケを箸で切りながら言った。
少年「ぼく、明日から学校に白靴下履いていかないから」
母親も父親も妹も、突然の事に呆然とした。
いちはやく混乱から立ち直った母親が、言う。さも笑えない冗談をあしらうように、言う。
母親「なに言ってるの。白靴下を履かないで何を履くというの。くだらない事を言ってないで黙って食べなさい」
少年「白は嫌なんだ。もう白は履かない。紺色か黒にする」
母親「何言ってるの。ウチには白靴下しかないのよ!」
少年「じゃあ!」少年は握った箸をテーブルに叩きつけ、立ち上がった。「買ってきてよ! 白じゃないやつ! 普通の、みんなが履いてる靴下! ダサくないやつ!」
少年の大声に母親は一瞬気圧されたが、ひるまないで怒鳴りかえした。
母親「ウチは白靴下職人の家よ! ダサいだなんてお父さんに謝りなさい!!」
少年「ダサいんだ! もう、嫌なんだ!」
母親「あんたって子は! もういい、出て行きなさい! そんな事を言う子は、もうウチの――」
この母親の叱責を遮って、妹も立ち上がった。
妹「ださいよ! わたしだって、もう嫌!」
母親「あなたたち……!!」
母親が言葉を続ける前に、息子も娘もキッチンを飛び出した。
母親「ま、待ちなさい!」
2人が玄関の方へ消えてしまうと、キッチンには冷めた食事と気まずい空気、そして父親と母親だけが残った。
父親「かあさん」父親はそっと箸をお椀に置いて、優しい微笑みを見せた。
「もう、いいんだ。わかってたんだ、僕も。もう白靴下が時代遅れの――ダサいものでしかないって」
母親「あ、あなた!」
父親「どうか、あの子たちを責めないでやってくれ。僕の身勝手だったんだよ、白靴下が時代遅れだと気付いていながら、あの子たちにちゃんと説明する勇気がなかった」
母親「でも貴方は白靴下に人生をかけて――!」
父親「いつか、時代が巡って、また白靴下がナウいとされる時代がくる――そう思い込む事で、僕は現実から逃げていたんだ。そんな僕の現実逃避が知らぬ間にあの子たちを傷付けていたのかも知れない」
母親「あなた……」
父親「イオンで紺色の靴下を買ってきてやってくれ。僕は工房を片付ける事にするよ。もう、白靴下は誰にも必要とされないんだ。潮時だ。気づくのが少し遅れてしまったけどね」
父親はゆっくり立ち上がって、優しくも悲しそうな笑顔で母親の肩にそっと手を置いた。
父親「君にも、苦労をかけたね。すまなかった」
そう言って、父親は庭の工房へと向かい、引き戸を開け、夕日に照らされる白靴下製作道具を長い時間眺めた。
やがて夕日が残光を残して山の稜線に消えた頃、父親はそっと引き戸を閉め、南京錠をかけた。
もう二度と、ここで白靴下が生み出されることはない。
■次回予告■
紺色の靴下を履いた息子の身に、悪の手が迫る!
昨日、少年は白靴下を履いて理不尽な世界にいた。
今日、少年は紺靴下を履いて軽薄な世界にいた。
次回『SSS! シックス・ソックス・ソサエティーの罠! 校内封鎖』
明日? そんな先のことはわからない。
白靴下の話、続きがめちゃくちゃ気になるんですけど………書いたりしませんか?笑
>>鈴川さん
大長編になるのですが、よろしいので?
もしかして靴下職人の話を本当にどこかで書いているんじゃないんですか?
靴下職人を語るとは…さすが、まつかくさんだわ!!
でも、私の記憶にある限りでは、白靴下を履いた事がない…
いつも、赤やど派手なピンク、澄み渡るような水色、エロな紫、黒にキラッキラのラメ(笑)
未だにそのまま(笑)
13月の更新、楽しみに待ってるからねん♪
シックスソックスソサエティ!を楽しみに毎夜訪れているのですがオルタイム更新ないなぁ(T . T)
きっとリアルが、充実して御多忙なのであろう。
ししとうも収穫忙しいだろうし。
13月はなかなかに重くて 間に軽妙なオルタイム読まないと後発組は読みきれないですー。
と、弱音を吐いてみる。
>>ジンさん
返事遅くなりました松核です。
なんだかあれやこれやと走り回っているうちに、すっかり更新をおざなりにしていました。
今日から再び13月を書こうと思います!
>>ずっ友のたまさん
返事遅くなりました松核です。
『エロな紫』というのは、まだまだですね。真のエロは白と紳士界隈では言われています。
>>ながやすさん
書いてる方はもっと重いのですwww
ちなみに、なーんも充実してないっすから安心してくださいね
やりたいことは多いのだけれど